迷ったときには兵法に学ぶという心構え

迷ったときには兵法に学ぶという心構え
七擒七縦(しちきんしちしょう) → 七たび擒(とら)え七たび縦(はな)すという戦う相手を力でねじ伏せず心服させる戦法のこと。

現代社会において戦略は欠かせない。

そして、個人的な話になるが、戦略や戦術を考えるときには兵法に学ぶことが多い。

これは私が社会人になったときに教えられたことが大きく影響していると思う。

今さら聞けない兵法ってなぁに?

兵法とは、戦争や戦闘において勝利を得るための法則や戦術を指す言葉だ。

古代中国や日本をはじめ、様々な地域で発展してきた。

兵法には多くの流派があるが、代表的なものとしては下記が挙げられる。

  • 孫子の孫子兵法
  • 三国志演義に登場する諸葛亮の軍師篇
  • 水滸伝に登場する林冲の林冲兵法

そんな兵法だが、基本的な考え方は、敵の状況を正確に把握し、自己の優位点を生かして攻撃することが重要視される。

孫子そのものが現代に何を教えるのかは、孫子の兵法が教える現代への智慧で詳しく掘り下げている。

また、敵を欺く策略や敵の心理に働きかける手段なども重要な要素とされている。

そして、重要なことは兵法は戦争や戦闘に限らず、ビジネスやスポーツなどでも応用されているという点だ。

例えば、ビジネスにおいては、競合他社の動向を分析し、自社の強みを生かして攻める戦略を立てることが兵法の応用例として挙げられることも多い。

兵法を設計・戦略・戦術の三段階に落とし込む手順については、兵法から学ぶ万全之策:現代を制する戦略と戦術の究極ガイドにまとめてある。

一方で、兵法は戦いにおいて勝利を得るための知識であるため、危険な状況で使用する場合もある。

そのため、倫理的な問題をはじめ、適切な使い方が必要となるのが兵法なのだ。

兵法の具体的な戦術

ということで、実際にはどんな戦術が兵法にはあるのか、いくつか例を挙げていこう。

偽装・欺瞞の戦術

自軍の兵力を偽装して、敵を混乱させる戦術だ。

例えば、敵が攻撃を仕掛けるのを待ち、夜間に兵士たちが火をつけて大軍を有しているかのように見せかける、夜襲火攻めなどがある。

速攻の戦術

敵を早期に攻撃し、混乱させることで勝利を目指す戦術だ。

例えば、敵の守備の弱い場所に一気に攻撃をかける奇襲や、敵の先手を打ち破る先制攻撃などがある。

速さを軍略の核に据えた実例としては、風林火山から学ぶ戦略的思考:武田信玄の知られざる真意も参考になる。

待ち伏せの戦術

敵が来るのを待ち伏せし、不意打ちで攻撃する戦術だ。

例えば、敵を待ち伏せして奇襲する伏兵や、敵の撤退を待って再び攻撃する追撃などがある。

防御の戦術

敵の攻撃を受け止め、自軍の地位を守る戦術だ。

例えば、敵の攻撃を壁や塹壕で防ぐ防御や、敵の攻撃を受け止めつつ反撃する防御反撃などがある。

敵を疲弊させる戦術

敵を疲弊させることで、勝利を目指す戦術だ。

例えば、敵の補給線を断つ補給断ちや、敵を長期戦に持ち込んで疲れさせる消耗戦などがある。

こうした発想をそのまま事業運営に持ち込んでいるのがstak, Inc. である。

あまり知られていない兵法の戦術

ということで、比較的わかりやすい兵法の戦術を列挙してきたが、こんなものではない。

あまり知られていないけれども、是非参考にしてもらいたいという兵法を書いていこう。

偽陣立ての戦術

敵を混乱させるために、自軍が陣立てしているように見せかける戦術だ。

例えば、木や竹を切って偽の兵舎を作ったり、旗を掲げて陣立てを装うなどの方法がある。

敵はこのような偽の陣立てに引っかかり、注意を散漫にしている間に攻撃を仕掛けることができるというわけだ。

飛び地攻略の戦術

敵の本陣から離れた飛び地を攻略する戦術だ。

例えば、敵本陣に直接攻め込むのではなく、本陣と補給基地などをつなぐ道や橋を攻略し、補給線を断ったり敵を分断したりすることで勝利を目指すというものだ。

後退誘導の戦術

敵を追撃しながら、自軍が少しずつ後退していく戦術だ。

敵は追撃してくるため、自然と敵と自軍の間が開くことになる。

この間を利用して伏兵を仕掛けたり、逆に追撃してきた敵を包囲したりすることができるのである。

短兵接近の戦術

短い武器を使い、敵に接近することで勝利を目指す戦術だ。

例えば、短い剣を使った短剣術や、手裏剣や投石器を使った飛び道具術などがある。

敵の長い武器には届かないけれども、接近することでその武器を封じ有利な戦いを展開することができるのである。

火鶴の戦術

火鶴とは、鶴の形をした火の玉のことをいう。

この戦術は、火鶴を敵陣に投げ入れ、混乱を引き起こしてから攻撃を仕掛けるというものだ。

また、火鶴には煙幕効果もあり、敵の視界を妨げることができる。

突進鉄槌の戦術

突進鉄槌とは、一点に集中して突撃する戦術だ。

例えば、弓兵や騎兵などが突進して敵陣を突破し、その後に歩兵などが続いて攻撃するという方法がある。

この戦術は、敵の陣形を崩すことができる一方で危険が伴うため、戦術的な調整が必要となる。

餓狼行列の戦術

餓狼行列とは、数人の兵士が群れを作って、敵陣に突撃する戦術だ。

兵士たちは、餓狼のように飢えているかのように、獰猛な態度で敵陣に突撃する。

この戦術により、敵を恐怖に陥れ、陣形を乱すことができるとされている。

二手に分かれる戦術

二手に分かれる戦術は、一度に二つの目的地に向かい、敵を惑わす戦術だ。

例えば、兵士たちは一部が正面から攻撃し、もう一部が側面から攻撃するという方法がある。

この戦術により、敵を分散させ、陣形を崩すことができるという。

過去に紹介してきた兵法について

私が兵法について注目していることは、昔から私の毎日更新ブログを読んでくれている人は何度か読んだこともあるかもしれないが、過去ブログも紹介しておこう。

暗中飛躍(あんちゅうひやく)
キングダムの中で桓騎将軍がとった孫臏(そんびん)という戦略

特に2つ目に注目してもらいたくて紹介したわけだが、キングダムという漫画は本当に面白いと思っている。

中には要らなかったなという話もあるが、ストーリー性が高く惹かれる話も多く、中でも桓騎という将軍が個人的にはとても好きだ。

いわゆる推しなのだが、上述した孫臏という戦術をとった話もとても面白くワクワクさせてくれた。

そんな桓齮将軍だが、当然他にも様々な戦術を実行しているわけだが、有名なのが空城計だ。

空城計(くうじょうけい)

空城計とは、攻め手が城門を目の前にしているときに、城内には兵士が見当たらず、城壁の上ではただ1人の城主が堂々と立っている光景を演出する計略だ。

この戦術をとることで、敵を欺いて逃げ道を与え、自軍の兵力を節約することができる。

伝説によると、桓齮将軍がこの戦術をとったのは、あるとき趙国の都の手前に位置する重要な要所である宜安を守備していたときのことだ。

敵軍が攻めてきた際に、桓齮は城壁の上で1人酒を飲むと、城内に明かりをともして城門を開け放ってしまったという。

すると、敵軍は不審に思って急に攻めるのを止め、逃げ出したそうだ。

このように、空城計は敵を欺くための計略として有名で、後に三国時代の蜀漢の名将、諸葛亮も南蛮の攻撃に対してこの戦術をとった。

また、この戦術は心理戦においても有効であり、現代のビジネスや政治においても応用されることがある。

反門計(はんもんけい)

反門計とは、自軍が包囲されている状況で、敵が自軍の守備に気を取られている隙に、逆に攻撃を仕掛け包囲を突破する計略だ。

桓齮がこの戦術をとったのは、あるときの戦場で魏国に包囲されている状況だったときのことだ。

敵軍が包囲の網を固めているところに、桓齮率いる一隊が急襲を仕掛けた。

敵軍は自軍が包囲している立場にあることを忘れ、一時的な混乱に陥ったことで、包囲を突破することができたというわけだ。

この戦術は、敵を欺くことで攻撃の隙を作り出す心理戦の一例だ。

敵に対して反撃の姿勢を示すことで、相手を油断させ、攻撃の手を緩めさせることができるというわけだ。

釜底抽薪(ふていちゅうしん)

釜底抽薪とは、自軍が包囲された状況で、敵が疲弊したところを狙って攻撃を仕掛ける計略だ。

具体的には、自軍が城内に籠城し敵軍が城壁を攻め立てる中、城壁内部にある敵軍の補給路を断ち切り、食糧や物資を奪うことで、敵軍の士気を低下させることを狙うというものだ。

桓齮がこの戦術をとったのは、あるとき魏国が攻めてきたのことだ。

桓齮は自軍が籠城し、敵軍が城壁を攻め立てる中、城内の井戸に毒を投げ入れ敵軍の飲料水を汚染しました。

その結果、敵軍は水を求めて撤退し、この機会に反撃を仕掛け、戦局を覆したのである。

補給線を断つことで、自軍の食糧や物資を確保することができるため、包囲戦において非常に有効な戦術とされている。

科学が示す「戦わずして勝つ」の合理性

兵法の教えは経験則の集積に見えるが、その多くは後の科学によって裏づけられている。

ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが1979年に提唱したプロスペクト理論は、人間が同額の利得よりも損失を強く感じることを示した。

兵法が繰り返し説く欺瞞や心理的な揺さぶりは、この損失回避の性質を突いている。

空城計が成立するのも、攻め手が「罠かもしれない」という損失の可能性を過大に見積もるからだ。

ハーバート・サイモンが1955年に示した限定合理性の概念も示唆に富む。

人間は情報処理能力に限りがあるため、最適解ではなく一定の水準を満たす解で意思決定を打ち切る。

兵法が情報の遮断や偽装を重んじるのは、相手の判断材料を減らせば相手の意思決定の質が構造的に下がることを、経験的に知っていたからである。

さらに、アメリカ空軍のジョン・ボイドが提唱したOODAループ(Observe・Orient・Decide・Act)は、観察から行動までの一巡を相手より速く回した側が主導権を握るという考え方だ。

速攻や先制攻撃が有効とされてきた理由を、時間軸の観点から説明している。

ジョン・ナッシュが1950年に定式化した均衡の概念に至っては、相手の戦略を所与としたとき自分だけが戦略を変えても得をしない状態を記述する。

兵法でいう膠着そのものであり、そこから抜け出すには相手の前提を壊すしかない。

偽装や後退誘導は、まさにその前提破壊の手段である。

stak の視点

兵法を読んでいて毎回行き着くのは、あらゆる戦術が結局のところ時間の奪い合いに還元されるという事実だ。

速攻は相手より短い時間で決着をつける手段である。

待ち伏せは相手の時間を消費させる手段である。

補給断ちは相手の持ち時間を削る手段である。

防御は自分の時間を稼ぐ手段である。

名前は違っても、やっていることは同じで、有限な時間をどちらが多く握るかを競っている。

stak, Inc. が「人件費=時間」という定義を掲げているのは、この構造が現代のビジネスにそのまま持ち込まれているからだ。

企業が支払っている人件費の実体は、人という資源ではなく、その人が使った時間である。

にもかかわらず、多くの組織は時間を無限に湧いてくる資源のように扱い、会議や確認作業に平然と投じてしまう。

兵法の言葉を借りれば、自軍の補給線を自分の手で断っているに等しい。

私が兵法から取り出したい教訓は、個別の計略の面白さではない。

自分がいま何に時間を使っているのかを正確に把握している側が勝つ、という一点だ。

孫子が「敵を知り己を知れば百戦殆からず」と説いたときの「己を知る」とは、精神論ではなく自軍の資源状況の把握である。

現代でいえば、どの業務に何時間かかっているかを数字で言える状態を指す。

AIの役割はここにある。

AIは人間の代わりに判断を下す道具ではなく、人間が判断に使うべき時間を確保するための道具だ。

定型的な処理をAIに預けた分だけ、人間はどこを攻めるかを考える時間を取り戻せる。

戦術の実行速度を上げるのではなく、戦略を練る時間そのものを増やす。

これが、AIインフラを事業の軸に据えている理由である。

兵法に学ぶという心構えは、古典の教養を身につけることではない。

有限な時間をどう配分するかという、極めて即物的な問いに向き合うことだ。

stak, Inc. が掲げる「圧倒的に合理的な社会を創造する」というミッションも、突き詰めれば同じ問いの上に立っている。

stak, Inc. の事業紹介

まとめ

様々な戦術を紹介してみたが、なかなか面白いと感じてくれた人も少なからずいるのではないだろうか。

勘の鋭い人であれば、現代社会のビジネスの場面でも応用できると思ってくれたはずだ。

私自身もまとめていて、いくつかの戦術を応用したアイデアが生まれた。

ということで、迷ったときには兵法に学ぶという心構えも悪くないということを改めて主張しておこう。